まず一点、大切なことをお伝えする。
アルセウスジュラルドンデッキに使われるアルセウスVSTARとジュラルドンVMAXは、どちらもFレギュレーションのカードだ。2025年1月のレギュレーション変更でFレギュがスタンダードから外れたため、現在このデッキはスタンダードレギュレーションでは使用できない。
ただしエクストラレギュレーションでは引き続き使用可能で、デッキとしての完成度が非常に高く、スタンダードで現役だった時期のプレイング理解はエクストラ環境でも活きる。また「このデッキをスタンダードで使いたい」という人に向けて、コンセプトの理解からデッキを組み替えるための土台知識としても価値がある内容だ。
そうした前提を踏まえながら、このデッキの本質を丁寧に解説していく。
940というHPを相手に削らせながら、こちらはサイドを6枚取り切る
ポケカで「耐久デッキ」という言葉はよく聞く。でもそれが具体的に「相手のHPの合計より自分のHPの合計の方が多い」という形で実現されているデッキは珍しい。
アルセウスVSTARをバトル場に、ジュラルドンVMAXを2体ベンチに立てることが最初の目標だ。このデッキではアルセウスVSTARによるエネ加速をしながらジュラルドンVMAXの耐久力を利用することで、相手のサイドの取らせ方をアルセウスVSTAR→ジュラルドンVMAX1体目→ジュラルドンVMAX2体目という2-3-3のプランにさせることが目的だ。3体のHPの合計は280+330+330=940点。
940という数字を相手は削り切らなければならない。その間にこちらはサイドを6枚取り切る。これがこのデッキの根本的なゲームプランだ。
しかもジュラルドンVMAXはドラゴンタイプのため弱点がない。そのため耐久力に優れ、どのようなデッキを相手にしても基本的な動き方は変わらない。
弱点がない。これは地味に見えて、実はものすごいアドバンテージだ。弱点をつかれると実質HPが半分になる——そのリスクが存在しないことで、「何のデッキが相手でもHP330として機能し続ける」という安定感が生まれる。
ジュラルドンVMAXという防壁——「まてんろう」の実態
このデッキの核心を担う特性「まてんろう」は、一言で言えば「特殊エネルギーがついた相手のポケモンからワザのダメージを受けない」というものだ。
特性「まてんろう」に注目すると、HP330という大きさに加えてこのポケモンは特殊エネルギーがついたポケモンからワザのダメージを受けない。フュージョンエネルギーやれんげきエネルギー、ダブルターボエネルギーといった特殊エネルギーを前提に戦うデッキが多数存在する。ジュラルドンVMAXはそのような戦い方ではダメージを与えることすらできない。
ミュウVMAXがフュージョンエネルギーを使ってクロスフュージョンを打とうとすると、ジュラルドンVMAXには届かない。ルギアVSTARがジェットエネルギーを使って逃げたポケモンがバトル場に出てきても、特殊エネルギーがついている限りジュラルドンVMAXへのダメージはゼロになる。
当時の環境では特殊エネルギーを前提にしたデッキが主流だったため、この特性が刺さる場面が非常に多かった。「特殊エネルギー怖くない」というプレイヤーのコメントが当時の大会結果に残っているが、まさにそれを体現したデッキだった。
ただしジュラルドンVMAXはとくせい「まてんろう」で特殊エネルギーが付いている相手のポケモンからはダメージを受けないが、基本エネルギーのみを採用したデッキには関係なくダメージを与えることができる。
特殊エネルギーを使わない純粋な基本エネルギー構成のデッキには、まてんろうが機能しない点は把握しておく必要がある。
アルセウスVSTARの役割——序盤のエンジンと中盤のブリッジ
アルセウスVSTARはこのデッキで二つの仕事を担う。
ひとつは序盤のエネルギー供給係。ワザ「トリニティノヴァ」は200ダメージを与えながら山札から基本エネルギーを3枚まで自分のポケモンに好きなようにつけられる。このエネ加速がなければ、ジュラルドンVMAXを早期に起動させることはできない。
アルセウスVSTARのVSTARパワー「スターバース」やワザ「トリニティノヴァ」からの盤面形成が容易であり、そのおかげもあって盤面に出すポケモンを必要最小限に抑えられることがこのデッキの強さを支えている要因となる。
もうひとつの役割が、「2-3-3のサイドプランを相手に強要する先陣」だ。アルセウスVSTARはまずバトル場に立って相手のサイドを2枚取られながら、その間にジュラルドンVMAXを2体育てる時間を稼ぐ。アルセウスが倒された後にジュラルドンVMAXが2体完成していれば、相手はその後に3枚+3枚という厚い壁を乗り越えなければならない。
「アルセウス→ジュラルドンVMAX→ジュラルドンVMAX」の順に出すと、相手はサイド8枚分のポケモンと戦う。この間にサイドを取り切るプランが基本だ。
「8枚分」という表現が絶妙で、サイドの合計が2+3+3=8枚ぶんの仕事を相手に課しながら、こちらは6枚取り切る計算で勝ちを狙う。
デッキを動かす3つの耐久手段
ジュラルドンVMAXのHP330だけで戦っているわけではない。耐久するための道具を3点用意している。大きなおまもり・すごいきずぐすり&ダブルターボエネルギー・結晶の洞窟だ。これらを使用することでHP合計値940点を超える耐久をしながら、キョダイフンサイの220ダメージを相手に与え続ける。
大きなおまもりはHPを90増やすどうぐで、ジュラルドンVMAXのHPが330→420になる。これがついている状態のジュラルドンVMAXを一撃で倒せるポケモンは相当限られてくる。
すごいきずぐすりはポケモンのHPを120回復するグッズで、ダブルターボエネルギーをコストとして使うことで中盤以降にも継続的に使える。攻撃を受けながら毎ターン回復し続ける姿は、まさに鉄壁の要塞だ。
結晶の洞窟は特定の条件下でHPを回復できるスタジアムで、ジュラルドンVMAXとアルセウスVSTARの継戦能力を底上げする。
実際の動かし方——「シンプル」の中にある深み
どのようなデッキに対しても基本的に動きが変わらないことや、必要最低限のポケモンのみでの戦い方は非常にシンプルで回しやすい構築になっている。また耐久のために相手のワザのダメージを考えながら適切なタイミングでの回復を用いたプレイングは、他のデッキにない楽しさを味わうことができる。
動きがシンプルだという点は本当で、「アルセウスVSTAR→ジュラルドンVMAX×2」という盤面を作ってひたすら耐えながら攻撃するだけ、というのがこのデッキの全体像だ。
ただ「適切なタイミングでの回復」という部分にこのデッキならではのセンスが問われる。
1ターン目の動き
アルセウスVからスタートした場合、ダブルターボエネルギーをつけてデッキからエネルギーをポケモンにつけられるワザ「トリニティチャージ」を使い、ベンチのジュラルドンVにエネルギーをデッキからつけることが最優先事項になる。
アルセウスVのトリニティチャージは先攻1ターン目から使えるワザで、山札からエネルギーをジュラルドンVに加速しながら次のターンのトリニティノヴァに備える。開幕からエネ加速の流れを作れるかどうかが、この後の展開に大きく影響する。
2ターン目以降
アルセウスVSTARに進化してトリニティノヴァを打ち、ジュラルドンVMAXへのエネルギー加速を継続する。同時にジュラルドンVMAXも2体ベンチで育てていく。
ジュラルドンVを1体は最初から出しておきたい。もう1体は「マスタード いちげきのかた」で後攻時に手札を1枚にしてから山札から直接ジュラルドンVMAXをベンチに出す手段も使える。
後攻はサポートを使えることから、「ハイパーボール」や「クイックボール」などで手札を減らしていって「マスタード いちげきのかた」1枚にすることで、デッキから直接「ジュラルドンVMAX」をベンチに呼ぶこともできる。
中盤以降の耐久判断
ここが腕の見せどころだ。相手の攻撃をいくつ耐えられるかを計算しながら、「このターンにすごいきずぐすりを使うか次のターンに持ち越すか」の判断を下す。相手がどのくらいのダメージを出せるかを読んで、きぜつしないギリギリのタイミングで回復を使う。これができると1ターンの攻撃を余分に耐えられ、その1ターン分でこちらのサイドが1枚進む。
サイドプラン「2-3-3」の強さを理解する
このデッキはポケモンVのみで構築されているため、きぜつした時にサイドを2枚以上取られてしまう。多くの場合アルセウスVSTAR、ジュラルドンVMAXときぜつするため相手の残りサイドは1枚だけになる。しかしこのデッキのポケモンはきぜつすると取られるサイドが2枚以上なので相手はより高いHPのポケモンを倒して残り1枚のサイドを取らなければいけなくなる。理想の場はジュラルドンVMAX1匹だけの状態だ。
「残り1枚のサイドを取るために、HP330以上のジュラルドンVMAXを倒さなければならない」という局面を作り出せれば、このデッキはほぼ詰みに近い状態になる。一撃で倒せるポケモンがいなければ、相手は2ターン以上かけてジュラルドンVMAXを削らなければならない。その間にこちらはボスの指令などで相手のベンチを攻撃してサイドを取り切ることができる。
苦手な相手と、ギラティナVSTARという天敵
まてんろうが機能しない相手が苦手なことは先述した。加えて、より明確な天敵が存在する。
ギラティナVSTARのVSTARパワー「スターレクイエム」でジュラルドンVMAXを強制的にきぜつさせられる。またアルセウスVSTARのHPは280なので、ワザ「ロストインパクト」で一撃で倒すことができる。
スターレクイエムは「ジュラルドンVMAXに特殊エネルギーがついているかどうか関係なく強制きぜつ」させる効果で、まてんろうで固めた防壁を一瞬で崩す。これが刺さると2-3-3のプランが完全に崩れる。
対策として「ビッグパラソル」というどうぐが存在した。
「スターレクイエム」などのジュラルドンVMAXを確定できぜつさせる効果を防ぐためにビッグパラソルを採用する1枚だ。ジュラルドンVMAXとビッグパラソルが出来上がるとかなり突破されづらい状態になるため、これが完成するかどうかが対ロストギラティナ戦のカギとなる。
使っていて実感したこと——「攻撃を受ける快感」という逆説
このデッキで一番面白いと感じたのは、「攻撃を受けることへの恐怖がない」という感覚だった。
普通のデッキは「攻撃されたくない、倒されたくない」という前提で動く。でもアルセウスジュラルドンは「どうせ倒せないだろ、ほら殴ってみなよ」という余裕がある。HP420のジュラルドンVMAXに相手が必死に攻撃してくるのを、すごいきずぐすりで回復しながらこちらは淡々とキョダイフンサイの220ダメージを与え続ける。
その静かな圧迫感は、他のデッキにはない独特の楽しさだった。
大会で当時印象的だったのは、相手のミュウVMAXデッキがフュージョンエネルギーを使っていたため、ジュラルドンVMAXへのダメージが完全にゼロになった試合だ。相手がキョダイフンサイを2回受けてようやく止まったのを今でも覚えている。
エクストラでの現在の立ち位置
2025年1月以降、このデッキはエクストラレギュレーションでの使用になる。エクストラではさらに強力なカードが使えるため構築の自由度が上がり、頂への雪道対策・回復手段の拡充・スターバースのサーチ精度向上など、さまざまな方向にデッキを強化できる。
エクストラで「特殊エネルギーを多く使うデッキ」が相手なら、まてんろうの有効性は変わらない。むしろエクストラ環境にはダブルドラゴンエネルギーやその他の特殊エネルギーを使うデッキが複数存在するため、刺さり具合は十分あると言っていい。
まとめ
アルセウスジュラルドンデッキは「シンプルな構成で最大の耐久を実現する」という一点に設計が集約されたデッキだ。
序盤はアルセウスVでトリニティチャージ、アルセウスVSTARへの進化後はトリニティノヴァで200ダメージ+エネ加速。ジュラルドンVMAXを2体ベンチで育て、大きなおまもりと結晶の洞窟で耐久力を底上げしながらすごいきずぐすりで継続回復する。特殊エネルギーを使う相手には「まてんろう」が機能して無効化。HP940の壁を相手に崩させながらサイドを取り切る。
現在はエクストラでの使用となるが、このデッキのコンセプト——「ポケモンを最小限に絞って耐久力を最大化する」という発想——はポケカの本質的な戦略の一つとして今も学ぶ価値がある。プレイングの深みよりも「盤面のシンプルさで強さを出す」アプローチに興味のある人には、特に響くデッキだと思う。

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