ゼラオラVSTARを握って最初のジムバトルに出た日のことを、今でもよく覚えている。手札がいい感じに整ってモココも2体並んだ。「よし、これは行ける」と思った矢先、相手の頂への雪道が貼られて特性がまるごと止まった。なすすべなく盤面が崩壊して完敗。帰り道、コンビニのコーヒーをすすりながら「このデッキ、モススさえ生きてればなあ……」とつぶやいた。あの苦い経験が、このデッキの本質を教えてくれた。
ゼラオラVSTARはシンプルに見えて、実は動かし方に明確な優先順位がある。その順番を外すとあっけなく崩れるし、はまれば相手の盤面をごっそりぶち壊す爽快感がある。
ゼラオラVSTARデッキの基本構造を知る
2枚の進化先を使い分けるという珍しい設計
このデッキには、ゼラオラVからVSTARとVMAXという2つの異なる進化先が存在する。同じゼラオラVを起点として、局面に応じてどちらに進化するかを選べる設計になっている。
この「選択進化」は、他のデッキにはあまりない構造で、慣れないうちはどちらに進化すべきか迷う場面が多い。でもここに、このデッキの奥深さがある。
ゼラオラVMAXはワザ「リアクトパルス」で、相手の場に特性を持つポケモンが多いほどダメージが増える。6体いれば360ダメージにまで膨らむ。もう一方の「ダイフィスト」はエネルギーを2個トラッシュしつつ240ダメージを叩き出す。
ゼラオラVSTARは「クラッシュビート」が主軸で、190ダメージを与えながら任意でスタジアムをトラッシュできる。VSTARパワーの「いかずちスター」は相手ポケモンを4回選び、選んだ回数×60のダメージを自由に割り振れる。
2体のゼラオラが持つ役割は全然違う。VMAXは相手の盤面次第で打点が大きく変わる「状況依存型のアタッカー」。VSTARはダメージを分散させる「盤面破壊型のアタッカー」。試合序盤に相手のデッキタイプを見極めて、どちらを優先的に育てるか判断するのがこのデッキの醍醐味のひとつだ。
モココの存在なしにこのデッキは成立しない
ゼラオラのワザは必要エネルギーが多めなため、トラッシュから雷エネルギーを加速できるモココの特性「エレキダイナモ」が必要不可欠な存在になっている。
モココの特性「エレキダイナモ」は、トラッシュにある雷エネルギーをベンチポケモンにつける効果だ。ただし、エレキダイナモで補充できるのは基本雷エネルギーのみで、スピード雷エネルギーなどの特殊エネルギーには対応していない点は覚えておきたい。
このデッキではかがやくゲッコウガも採用されることが多い。特性「かくしふだ」で手札から雷エネルギーをトラッシュしながら山札を2枚引けるため、モココとの連携が自然に成立する。ハイパーボールでサーチしながらエネルギーをトラッシュに送る動きも同じ文脈だ。トラッシュへの雷エネルギーの送り込みを常に意識しながらプレイするのが、このデッキを動かすうえでの基本姿勢になる。
序盤の動き方、先攻と後攻で優先順位が変わる
先攻のときに目指すべきゴール
先攻の1ターン目でやるべきことは明確だ。とにかく盤面を広げる。ゼラオラVをベンチに複数置きながら、メリープをベンチに出しておく。モココへの進化は2ターン目以降になるが、メリープが場にいなければ話にならないので、ここを怠ると後に響く。
スピード雷エネルギーをゼラオラVにつけながら手札を補充しつつ、嵐の山脈でさらにたねポケモンを呼び込む動きが理想的な先攻1ターン目のゴールだ。
このデッキでは場にアタッカーとエネルギー加速要員のモココを早く展開することが重要で、そのためにクロバットVなどで序盤から山札を多く引く動きが求められる。
後攻のときはバチンウニが起点になる
後攻ではテンポが遅れる分、序盤の動きをどう補うかがカギになる。
特に後攻の場合、モココを並べないとゼラオラたちが動けないため、最初にバチンウニを持ってきてワザ「なかまをよぶ」でメリープをベンチに並べることがすすめられる。こうしてボールを節約しておけば、モココを確保するためのリソースを温存でき、より早く攻撃に移れる。
ボールを無駄に使ってしまうと、2ターン目以降にモココが引けなくて詰まる。後攻はリソース管理が特に重要で、序盤の1枚1枚の使い方が後半の動きを大きく左右する。
エネルギーをどう用意するか
ハイパーボールの効果で基本雷エネルギーをトラッシュしながらサーチを行うことで、モココの特性エレキダイナモをすぐに発揮できる状態に持っていけるため、スムーズな展開につながる。
これを意識すると、ハイパーボールは単なるサーチカードではなく「エネルギーをトラッシュに送る手段」としての機能も果たすことになる。博士の研究で手札をリフレッシュしつつ雷エネルギーが落ちていくのも、このデッキにとっては悪い話ではない。むしろそれが後からモココの燃料になる。
中盤の立ち回り、VSTARかVMAXかを決める判断軸
相手のデッキを見て進化先を決める
ゼラオラVMAXの強みは、特性を持つポケモンが多いデッキ——うらこうさくラインやターボ型のデッキなど——に対して高いダメージを出しやすい点にある。
裏工作を使うインテレオンデッキや、ビーダルなどの特性持ちが並ぶデッキと当たったなら、VMAXに進化するのが基本的な判断になる。逆に相手が特性持ちをあまり使わない構成なら、無理にVMAXを育てる理由は薄い。
ゼラオラVSTARのワザ「クラッシュビート」はやや打点が不足気味で、耐久デッキを突破するのが難しい場面がある。そういった相手にはレックウザVMAXを組み合わせることで弱点を補う構成もある。
自分の経験では、盤面を読まずに何となくVSTARに進化してしまって、後から「VMAXにしておけば240取れたのに……」と後悔したことが何度もある。進化前のゼラオラVが場に2体以上いる状況なら、1体目はVMAX、2体目以降はVSTARという役割分担を意識して進化させるのが無駄がない。
こだわりベルトは絶対に忘れない
クラッシュビートのダメージは190で、エネルギー3個での火力としては最近のカードの中では低い部類に入る。こだわりベルトなどのサポートは必須だ。
こだわりベルトをゼラオラVMAXにつけることで、多くのポケモンVSTARを一撃で倒すことも可能になる。
ベルトなしでVSTARの攻撃を通しても相手のVが落とせない、という状況は割と頻繁に起こる。打点が惜しくてサイドを取り切れないままターンを渡すのが一番もったいない展開なので、ベルトを誰に貼るかは毎ターン意識しておきたい。
スタジアムへの対応は冷静に
クラッシュビートは、頂への雪道のような妨害スタジアムをトラッシュするより、ポケストップのような自分にだけ有利なスタジアムの恩恵を受けたうえで、ワザでトラッシュするという使い方のほうが有効になる場面も多い。
頂への雪道が貼られたとき、すぐに焦って入れ替えるプレイヤーが多いが、このデッキにはクラッシュビートという「殴りながらスタジアムを消せる」選択肢がある。攻撃とスタジアム除去を同時にこなせるのはVSTARの強みで、無駄にサポートを使って雪道に対抗する必要がない場面では、むしろ貯め置きしてワザで一掃する動きのほうが効率がいい。
いかずちスターをどこで使うか、これが一番難しい
VSTARパワーは「使い切れる場面」まで待つ
いかずちスターはVSTARパワーなのでゲーム中1回しか使えない。60を4回割り振れるので、4体に60ずつ、2体に120ずつ、あるいは1体に240ダメージという使い方ができる。
この自由な割り振りが、このワザの最大の強みだ。ただしゲームに1回しか使えない以上、「もったいない使い方」は絶対に避けたい。
相手が非Vポケモンをベンチに展開している場合は、このVSTARパワーで相手の場を荒らしつつ複数枚のサイド取りを狙うことができる。相手のメッソン2体とジメレオン1体をそれぞれ倒せるようにダメージを調整して、一気にサイド3枚を取ることも可能だ。
これを狙えるかどうかがいかずちスターの理想的な使い方で、1体に対して240を叩き込むだけでは正直もったいない。相手の盤面が崩れているタイミング、もしくは相手が多くの非Vポケモンをベンチに並べているときに温存しておいて、一気にサイドを3〜4枚取りにいく動きが決まると本当に気持ちいい。
マナフィへの対処を忘れずに
相手のベンチにマナフィがいる場合、いかずちスターはダメージなのでベンチへの攻撃ができなくなる。
これに気づかないまま「よし今だ」とVSTARパワーを切ってしまうと、バトル場の1体にしか当てられず、せっかくの1回限りの権利が半分以下の仕事しかしなくなる。相手の場にマナフィがいるかどうかは、毎ターン確認する癖をつけておきたい。キャンセルコロンを採用しているリストも多く、マナフィの特性を無力化してからVSTARパワーを使うという流れが丁寧な一手になる。
ベンチ狙撃という選択肢も持っておく
240ダメージをベンチ狙撃するパターンも実戦ではかなり多い。たとえばロストデッキのキュワワーを120・120で2体倒すというような使い方もある。
相手がベンチに育てかけているアタッカーを狙い打ちして「次の攻撃を封じる」という戦術的な使い方も有効だ。サイドを複数取ることだけに固執しすぎず、状況によっては相手の攻撃手段そのものを潰すために使うのが正解なこともある。
終盤の詰め方、サイドレースを制する
モココを守りながら戦い続ける
相手は当然、デッキのエンジンであるモココを狙ってくる。厚めにしておいて損はない。
モココが落とされたときのリカバリー手段として、レスキューキャリーでの回収も選択肢に入れておくと安心だ。エネルギー加速が途絶えた瞬間、このデッキは一気に動きが鈍くなる。モココを2体以上維持できているかどうかで、中盤以降の息切れのしやすさがまったく変わってくる。
ゼラオラVSTARの逃げゼロを活かす
モココの特性エレキダイナモは、雷タイプで逃げゼロのゼラオラVSTARとの相性が抜群だ。
逃げエネルギーが0というのは、地味に見えて試合全体を通してじわじわ効いてくる。エネルギーをアタッカーに貼ってそのまま逃げられる、入れ替えグッズが不要になる、バトル場に出ている時間を最短にして被ダメを減らせる——こういった小さな積み重ねが、長期戦になるほど差を生む。ふうせんを持たせなくても自由に動ける点は、このデッキの小さいようで大きな強みだ。
ダイフィストのエネトラッシュはデメリットではない
ゼラオラVMAXのダイフィストはエネルギーをトラッシュする必要があるが、モココの特性で再度エネルギーをつけていけるため、さほど気にならない。
「エネを2つトラッシュする代わりに240を出す」という一見デメリットに見える効果が、モココの存在によってほぼ中和される。ダブルターボエネルギーを1枚トラッシュしてゼラオラに雷2エネを残すという方法もある。この動きを使うことでエネのロスを最小限に抑えながら大ダメージを出せる。
ダイフィストでトラッシュしたエネルギーはモココの特性エレキダイナモで再利用していくという回転を作れれば、終盤まで火力が落ちることなく戦い続けられる。
実戦で学んだ失敗と成功
「先にモココを揃えてから」という思い込みで負けた話
以前、先攻を取った際に「絶対モココを2体揃えてから動こう」という意識が強すぎて、2ターン3ターンとひたすら展開だけしていた試合がある。その間に相手はどんどん攻撃して来て、あっという間にサイドを2枚取られた。慌てて攻撃を始めようとしたが、もうこちらの盤面は受けに回るので精一杯。そのまま逆転できずに負けた。
反省点は明確で、攻撃できる状態になったらさっさと仕掛けるべきだった。モココが1体でも機能しているなら、十分なエネルギー供給ができる。完璧な盤面を目指しすぎて、攻撃のタイミングを逃すのがこのデッキでよくある失敗パターンだ。
いかずちスターでサイドを一気に3枚取った話
あるシティリーグでの試合。相手がロストバレットを使っていて、キュワワーをベンチに3体並べていた。こちらはVSTARパワーをずっと温存していて、そのターンにようやくゼラオラVSTARが育ったタイミング。いかずちスターで60を3体のキュワワーに割り振って相手は絶句していた。一瞬でサイド3枚を取ってそのまま押し切ることができた。
VSTARパワーを焦って使っていたら、おそらく1体か2体の処理しかできていなかっただろう。温存することのリターンがこれだけ大きいのだと実感した瞬間だった。
このデッキが面白い理由
ゼラオラVSTARデッキは、ハイクラスデッキという入手しやすい製品から始まりながら、改造次第で大会でも十分戦える仕上がりになるデッキだ。主要パーツであるゼラオラVSTARやモココは比較的安価で、汎用カードさえ揃えておけば低コストで組める。
このデッキの本質は、エネ加速の安定感とVSTARパワーの柔軟な使い方にある。「いつ、どこに、いかずちスターを撃つか」を考えながらプレイするのが楽しくて、50歳の今もジムバトルのたびにわくわくしながらデッキを握っている。派手なワンパンデッキではないが、盤面全体を見て計算しながら勝つ達成感はなかなか他のデッキでは味わえない。

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