ロストバレットを使い込んでいると、ある種の対面でだけ急に「何もできなくなる」感覚に陥ることがある。手元にアクロマの実験はある、キュワワーもいる、なのに動けない。じわじわと詰まっていくあの感覚は、他のデッキにはない独特の苦しさだ。ロストゾーンという仕組みに頼り切っているデッキだからこそ、その仕組みを止められると全部が止まる。20年以上ポケカをやってきて、これほど動力が明確なデッキも珍しいと思っている。
相性の悪いカードを深く理解するには、まずロストバレットがどこで息をしているかを掴む必要がある。
ロストバレットの急所はここにある
ロストバレットはロストゾーンを活用して場を展開していき、最終的に相手のポケモンに合わせて攻撃していくデッキだ。キュワワーの特性「はなえらび」などでロストゾーンのカードを増やしていき、ウッウの特性によりエネルギーなしでワザ「おとぼけスピット」を使って攻撃する。中盤からはミラージュゲートでエネルギー加速したアタッカーポケモンで攻撃していく。
ロストゾーンにカードが4枚たまらないことにはワザを出せないデッキだ。それゆえバトル場の特性を止めるカードでキュワワーに「はなえらび」をさせなければ、動き出しはかなり遅くなる。
弱点の構造はシンプルで、キュワワーの「はなえらび」を止める、ミラージュゲートを使わせない、ベンチへのダメージを防ぐ——この3軸を理解するだけで、相性の悪いカードが見えてくる。
ハバタクカミ——最も刺さる特性ロックカード
攻撃しながらキュワワーを止める二重の脅威
特に「ハバタクカミ」はワザを出しながら特性ロックができるので、ロストからすると非常につらいカードだ。ただし1枚だけなら「テツノツツミ」の「ハイパーブロアー」でバトル場から退場させて特性を使えるようにできるので、2枚セットで使う必要がある。
ハバタクカミの特性「あんやのはばたき」によって、相手バトルポケモンの特性をなくすことができる。これでキュワワーの「はなえらび」を封じられる。クレッフィとの差別化として、ベンチでも使えるかがやくゲッコウガの特性「かくしふだ」も封じられるという点が強みだ。
ハバタクカミがバトル場に出てくると、こちらのキュワワーは置き物になる。「はなえらび」が使えないキュワワーは特性なしのHP70のたねポケモンに過ぎず、ロストゾーンが全く積み上がらない。試合を始めながら足踏みしているような状況が続いて、気づいたら相手だけが先に攻撃可能な盤面を作っている。
サーナイトexデッキがハバタクカミとクレッフィを先攻1ターン目に場に出してきたらゲーム終了、という表現が使われるくらい、この2枚の組み合わせはロストバレットにとって致命的だ。
これが実際の対戦でどう見えるかというと、先攻1ターン目から相手の場にハバタクカミとクレッフィが並んでいる状況で、こちらのキュワワーは「はなえらび」も「いたずらロック」も両方封じられて完全に機能不全になる。サポートのアクロマの実験はまだ使えるが、ロストゾーンの積み上げ速度が半減以下になり、試合のペースで完全に後手を踏む。自分もこれをやられた瞬間は手のひらに汗が滲んだ。
テツノツツミで退場させる対処と、その限界
ロストバレット側からハバタクカミへの返し手として、テツノツツミの「ハイパーブロアー」でバトル場から押し出す動きがある。ただし相手が2枚積んでいる場合、1体を退場させても次が出てくる。消耗戦になるとロストゾーンを積む速度が追いつかなくなる。
クレッフィ——ベンチにいても仕事するグローバル特性封じ
たねポケモン全体の特性を止める圧力
クレッフィの「いたずらロック」はベンチでも使えるかがやくゲッコウガの特性「かくしふだ」も封じられる点がハバタクカミとの差だ。逆にワザが弱く時間稼ぎにしかならない点ではハバタクカミより劣る。アクロマの実験だけでロストゾーンを貯めきられたりしてしまうのが少し弱い面もある。
クレッフィの「いたずらロック」はお互いの場のたねポケモンの特性をなくす。ハバタクカミがバトル場限定なのに対し、クレッフィはバトル場にいれば相手のベンチポケモン含む全員のたね特性を封じる。かがやくゲッコウガの「かくしふだ」も止まるため、ロストバレット側が手札を補充しながらエネルギーを落とすルーティンが機能しなくなる。
クレッフィはベンチにいるポケモンも含めてたねポケモン全体の特性を止められ、解除の憂いがないという点でサーナイトデッキのロスト対策として機能する。自分のかがやくゲッコウガの特性も止まってしまうので注意が必要だが、ロストバレット側への影響は大きい。
キュレム——ロストバレット専用かと思わせるメタカード
ロストバレットのワザをすべて無効化する設計
レジドラゴVSTARデッキが採用するキュレムは、ロストバレットに対して簡単にキャンセルコロンと呼び出し札を揃えて「トライフロスト」を使ってくるため、しばらくロストバレットが環境からはじき出されていたくらい強力なメタカードだ。
ロストバレットに採用されているワザ「おとぼけスピット」「ロストマイン」「げっこうしゅりけん」「くるいえぐる」「ごっつぁんプリファイ」、これらのワザはすべてレジドラゴ対面で有効ではない。そのうえキュレムはマナフィが出ていても関係なくバトルに参戦させられ、HP130でおとぼけスピットで倒せない上に1エネ110ダメージでロストバレットにとって無視できない存在であり、単純な単体スペックも高い。
この説明を読んで「なるほど」と思うと同時に、当時のロストバレット使いたちの苦労が目に浮かぶ。自分たちのデッキのアタッカーが軒並み機能しないのに、相手だけが普通に攻撃してくる。しかもHP130のキュレムは「おとぼけスピット」110ダメージでは倒せない。ロストゾーンを積んでウッウで殴り続ける流れが完全に詰まってしまう。
レジドラゴ側がロストバレットをイージーウィンすることは多分にあるが、ロストバレット側がレジドラゴをイージーウィンすることはそうそうない。単純にデッキ60枚を総合したパワーの差がありすぎる、という厳しい評価もある。
クワガノンV——グッズロックでデッキを根本から止める
クワガノンVのワザ「パラライズボルト」は50ダメージを与えながら次のターン相手がグッズを使えなくなるという強力な効果を持っていて、序盤で回収ネットやあなぬけのヒモを多用してくるロストバレットをほぼ完全に止めることができる。
ロストバレットは回収ネットをキュワワーに使って「はなえらび」を複数回起動したり、あなぬけのヒモで入れ替えながら盤面を作ったりとグッズ依存度が非常に高い。グッズが1ターン使えないだけで展開が大幅に遅れ、ロストゾーンの積み上げも滞る。クワガノンVがいる間はアクロマの実験も回収ネットも封じられ、手札が詰まったまま番を渡し続けることになる。この対面で勝った記憶がほとんどない。
マナフィとジラーチ——ベンチへのダメージを防ぐ
ベンチ狙撃を遮断する2枚の壁
ロストバレットの強さにベンチへの多彩な干渉がある。それを防ぐのがマナフィとジラーチだ。マナフィはかがやくゲッコウガのワザ「げっこうしゅりけん」を、ジラーチはヤミラミのワザ「ロストマイン」をそれぞれ防ぐ。ベンチに両方を用意されてしまうとバトル場のポケモンでの戦いになるが、そうなるとロストバレットのアタッカーは若干パワー不足になるため対策する側がやや有利にゲームを進められる。
ロストバレットの真骨頂は、ヤミラミのロストマインとげっこうしゅりけんで盤面全体を荒らしてサイドを複数枚一気に取ることにある。マナフィとジラーチの両方を並べられると、この主力プランが完全に封じられる。残るのはウッウで1体ずつ倒していく正面突破のみになるが、こうなると火力と耐久の点で不利な戦いを強いられる。
一度対戦相手がこの2枚を初手から展開してきたことがあって、「ロストマインも届かない、げっこうしゅりけんも届かない」という状況に陥った。シングルアタックでこつこつ倒していくしかなく、相手のペースに飲まれたまま負けた。このデッキにとってベンチ狙撃が使えないことがどれほど致命的か、実感できた試合だった。
ビワ——ミラージュゲートをピンポイントで落とす
相手の手札のグッズ2枚をトラッシュできるサポート「ビワ」は、いいタイミングで使うと相手が次のターンに使おうとしていたミラージュゲートを落とせたりして強力だ。ただしこの見極めが難しい。
ビワの採用も主流になってきており、ミラージュゲートなどロストバレットが高いダメージを出すために必要なトレーナーズをトラッシュさせられてしまう。
ミラージュゲートはロストバレットにとって命綱のカードだ。これを使うことでタイプの異なる2種のエネルギーを同時に加速でき、デッキの多彩なアタッカーを動かすことが可能になる。ビワでここを直接落とされると、中盤以降に大型アタッカーを展開するプランが崩れる。ロストゾーンを7枚積むところまでは耐えられても、ミラージュゲートなしで大型を動かす手段がなくなる。
ミストエネルギーとレガシーエネルギー——サイドレースを歪める特殊エネルギー
ベンチ守護と取られるサイド数の操作
ルギアVSTARデッキのレガシーエネルギーとミストエネルギーはどちらもロストバレットにとって厳しいカードで、このマッチアップはメタカードによって勝率改善を図らなければならない。
ミストエネルギーがついたポケモンはワザの効果を受けない。げっこうしゅりけんはダメージを与える効果であるため機能するが、特殊なワザ効果を伴う攻撃は通らなくなる。さらにレガシーエネルギーは取られるサイドを1枚減らすため、サイドレースの計算が根本から狂う。
レガシーエネルギーがついたテツノカイナexをきれいに返す手段がなく、順当に回られるとサイドレース的に厳しい試合を強いられることになる。
サイドを1枚しか取れないはずの立ち回りで動いていたら、相手はサイドを2枚取られる場面をレガシーエネルギーで1枚に抑えてくる。これが繰り返されると、サイドレースが取り返しのつかない差になって試合が終わる。
連続手札干渉——ロストゾーンを止めないまま手詰まりにする
比較的手札干渉に強いロストバレットだが、2〜3ターン連続で手札干渉されると流石に動けなくなる可能性が高い。特定の対策カードを入れたくない場合は、ナンジャモ・アンフェアスタンプ・ツツジで合計3枚以上採用して連打するのがよい。
1枚の手札干渉なら、ロストバレットはアクロマの実験やキュワワーの「はなえらび」でリカバリーできる耐性がある。しかし2ターン連続、3ターン連続で干渉されると山を掘る速度が追いつかなくなり、ロストゾーンの積み上げが遅れる。手数で詰め込んでくる構成には脆さが出る。
HPの高いポケモン——火力の上限に阻まれる
ロストバレットはHPの多いポケモンに対して対応が難しいデッキ構築だ。
ウッウの「おとぼけスピット」は110ダメージ、こだわりベルトをつけても140が上限になる。ヤミラミのロストマインはダメカンを12個分散させるため、HPが高い1体に集中させてもなかなか倒せないケースが出てくる。ガチグマアカツキexやかがやくリザードンを採用してHPの高い相手を処理するプランを立てる必要があるが、それらの準備を整えるまでに時間がかかる分、高耐久デッキとの対戦は苦しくなりやすい。
失敗から学んだこと——知らずに踏んだ地雷の話
シティリーグでロストバレットを持ち込んだとき、初戦がサーナイトexデッキだった。先攻1ターン目に相手がクレッフィとハバタクカミを両方展開してきた。「どっちかなら対処できる」という甘い計算が完全に外れて、キュワワーが全く動けないまま2ターンが過ぎた。アクロマの実験でギリギリ動いていたが、ロストゾーンは3枚のまま。3ターン目にウッウを出してもロスト枚数が足りず、さらにそこに「アンフェアスタンプ」が飛んできた。手札2枚、ロスト3枚、何もできず——そこから逆転できなかった。
事前に「ハバタクカミとクレッフィが2枚ずつ積んでいることがある」という情報を持っていたにもかかわらず、対処手段を一切デッキに入れていなかったのが敗因だった。テツノツツミで押し出す、というプランをあらかじめ組み込んでいれば、少なくとも状況は変わっていた。
ロストバレットを使う上での本質的な準備は、相手がどんなメタカードを使ってくるかを想定してデッキを組むことと、実際に対面したときに「今何が止まっているか」を素早く把握して動き方を変えることだ。アクロマの実験は使える、サポートは通る——そこから逆算して、ロストを積む手段がほかに残っているかどうかを瞬時に判断する。これができるかどうかが、ロストバレットを使いこなすうえで一番差がつく部分だと感じている。

コメント